書籍
発刊 2026.02
トランプ発言で揺れる「世界最大の島」の行方
『グリーンランド〈増補新版〉』
人文社会科学から照らす極北の島
高橋 美野梨 編著 | 藤原書店 | 432p | 3,630円(税込)
Contents

序章 なぜグリーンランドを論じるのか(高橋美野梨)
第1章 節合×分節 エスキモー社会をめぐるまなざし(高橋美野梨)
第2章 イヌイット×ノース人 中世における異文化接触とレジリエンス(小澤実)
第3章 貿易×交接 グリーンランド貿易の成立とイヌイット社会(井上光子)
第4章 魂×神 キリスト教宣教と伝統の改変(須藤孝也)
第5章 時間×空間 文化へのタイム・トラベル(ソアン・ルド/高橋美野梨 訳)
第6章 民族誌×植民地主義 「穏健な支配」と儀礼の衰退(本多俊和(スチュアート ヘンリ))
第7章 国家×共同体 デンマーク国家のゆくえ(ウルリック・プラム・ガド/高橋美野梨 訳)
第8章 セドナ×人魚姫 先住民表象の解体と人魚文学研究(中丸禎子)
終章 これまでとこれからのグリーンランド(高橋美野梨、イーリャ・ムスリン)
補論 トランプが照射したデンマーク国家の輪郭(高橋美野梨)

Introduction
数々の異例ともいえる政策を打ち出し、世界に波紋を広げる米国トランプ大統領だが、その一つに、米国による「グリーンランド所有」の模索がある。渦中となった、デンマーク自治領であるグリーンランドでは、2026年の年初の時点で自治政府首相が「どちらかを選ぶならばデンマークを選ぶ」と発言している。
2023年8月に発行された同名書籍の増補新版である本書は、人類学、政治学、歴史学、宗教学、文学など人文社会科学の知見を持ち寄り、エスキモーと非エスキモーなどが「混淆」するグリーンランドにおける人間の営みを多角的に描き出す論集。トランプ発言を踏まえたグリーンランドとデンマークの未来を占う特別論考を緊急増補している。グリーンランドは、北大西洋と北極海の間に位置する世界最大の島であり、216万6086平方キロメートルという総面積は日本の約6倍に相当する。編者の高橋美野梨氏は北海学園大学准教授。トランプ事案をめぐって大車輪の動きを見せ続けるデンマーク国際問題研究所に、2024年4月から2025年6月まで研究員として滞在し、共同研究を遂行するとともに、帰国後も同事案に関する時事評論の発表を継続している。専門は国際関係学、デンマーク・グリーンランドを中心とした北極政治。本書は高橋氏を含む9名が執筆しているが、ダイジェストでは高橋氏が担当した第1章と補論を取り上げた。