
人権問題を重要な経営課題とする企業は少なくない。サプライチェーンのどこかで児童労働や強制労働、過酷な労働環境、安全衛生の欠如などがないかを調べる「人権デュー・ディリジェンス」を実施する企業も増えている。ところが過酷な人権侵害があるにもかかわらず可視化されていない国がある。コンゴ民主共和国だ。
本書は、アフリカのコンゴ民主共和国で起きている、レアメタルの一種である「コバルト」の採掘における、苛烈な労働搾取の実態を、ていねいな現地取材によって描き出すノンフィクション。スマートフォンや電気自動車などに欠かせない充電式リチウムイオン・バッテリーに使われるコバルトは、世界の埋蔵量の半分がコンゴ民主共和国からザンビアにまたがる、「中央アフリカ・カッパーベルト」と呼ばれる鉱床にある。そこでは現地の労働者が原始的な方法で採掘を行っているが、低賃金かつ、深刻な健康被害を引き起こす危険な現場で働き、児童労働も当たり前のように行われているという。著者は作家、現代の奴隷制の研究者、活動家。イギリス学士院グローバル・プロフェッサー、ノッティンガム大学准教授(専攻は人身売買と現代の奴隷制)。

