
アジア最高クラスのホテルとして知られる一つに、タイ・バンコクのマンダリン・オリエンタル・バンコクがある。前身のホテルから数えて、2026年に創業150周年を迎える老舗であり、各界の有名人、文化人に愛されてきた。ときに歴史に翻弄されながらも、その格式とホスピタリティを守り続けている。
本書は、オリエンタルホテル(1974年にジ・オリエンタル・バンコク、1985年に現在のマンダリン・オリエンタル・バンコクに改称)のなかで運営にかかわってきた人びとの物語を中心に、ホテル史と時代背景をひもとく歴史ノンフィクション。オリエンタルホテルの歩みは、タイとインドシナ半島の激動の近代史にそのまま重なる。第二次世界大戦中の日本軍の侵攻により、オリエンタルホテルは日本陸軍の施設として使われ、帝国ホテルが運営を担った。150年の歴史を通して、多彩な、国際色豊かな人物たちが経営者や支配人となり、伝統をつないでいった。著者はノンフィクション作家、ホテル産業ジャーナリスト。ホテルをテーマとした著作に『「築地ホテル館」物語』『帝国ホテルと日本の近代』(ともに原書房)などがある。

