社会原理に基づく「共感的な利他主義」とは何か
『共感の論理』
日本から始まる教育革命
渡邉 雅子 著
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岩波書店(岩波新書)
| 206p
| 990円(税込)

はじめに――社会と教育の大転換
序章 近代の矛盾とポスト近代の価値観
第1章 四つの教育原理――教育文化のモデル
第2章 共感の論理――社会原理の日本の教育
第3章 教育のグランドデザイン――利他と多元的思考を育む
終章 日本から始まる新しい秩序――利他と多元的思考が拓く未来

気候変動に伴う自然災害や戦争、経済格差といったグローバルな社会課題が深刻化している。これらは近代化の矛盾と捉えることもできるが、日本は、その矛盾を克服する価値観を、学校教育を通じて長く継承してきたという。自然を「搾取する対象」と考えず、「自然の一部としての人間」と認識する価値観だ。
本書は、近代化の矛盾や問題を指摘するとともに、それらを解決する「ポスト近代」の価値観を示す。ポスト近代には、経済、政治、法技術、社会の四つの領域のうち、近代に主だった経済領域ではなく、社会領域の原理が主になる必要があるという。そして、ポスト近代に求められる価値観は、日本の学校で教えられてきた「共感」の論理によって育てることができるとする。さらに、社会原理に基づく「共感的利他主義」が、脱近代化の鍵になると説く。著者は名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授。コロンビア大学大学院博士課程修了。博士(社会学)。著書に『論理的思考とは何か』(岩波新書)などがある。
