
英仏間の重要な経路である海峡の知られざる歴史
『「イギリス海峡」の社会史』
「狭くて賑やかな海」をめぐる英仏関係の行方
The Busy Narrow Sea: A Social History of the English Channel
Robin Laurance 著
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The History Press
| 222p


1 英国がヨーロッパ大陸から最初に離れた時
2 遠泳
3 二都物語
4 カウサンドの人々と密輸業者
5 海峡の島々
6 戦時の海峡
7 小荷物、風船、船酔い
8 小説家、詩人、画家、ドビュッシー
9 海峡の日々


英国南東部とフランス北西部の間にあり、北海と大西洋の間の航路にもなっている東西約560kmの浅い海峡が「イギリス海峡」である。欧州大陸と英国との間をつなぐ経路として歴史的に重要で、最近では移民問題の舞台としても耳目を集めている。この海峡の一部はかつて陸地であり英国と大陸を地続きにしていた。

英国で刊行された未邦訳の本書は、太古から現在に至るまでの、イギリス海峡の社会的、文化的エピソードを紹介する一冊。自然の営みにより、有名なドーバー海峡を含むイギリス海峡が出現したきっかけは45万年前に遡る。世界的にも潮位差が激しく、流れが急な海峡として知られ、航海の安全のために灯台が早くから建設されてきた。この海峡は英仏対立の舞台にもなっているが、とくに漁業をめぐるいざこざが、今も絶えないようだ。著者のロビン・ローレンス氏は、「タイムズ」や「ガーディアン」などに寄稿するフリーランスの記者。