

南アジアの一国バングラデシュが、後発開発途上国(LDC)のステータスから卒業することが、2021年に国連総会で決議された。インドやミャンマーとの間に長い国境を有する同国は、「移住・移民」が国家運営の重要な要素になってきた。経済成長は、そうした「人の動き」にどんな影響を及ぼすのだろうか。

本書では、バングラデシュにおけるボーダーランド(広義の国境地帯)、また中東への「出稼ぎ」、さらに欧米などの先進国への人の留学や移住に着目し、実地調査の結果等をもとに、その実態について論じている。ボーダーランドでの移住・移民は、隣国との間にさまざまな問題を引き起こし、今も課題を抱える。一方で近年では、農村からの「出稼ぎ」を政府が推奨、さらに先進国への医療ツーリズム、高等教育のための留学が盛んになる傾向があるようだ。著者は広島修道大学人文学部教授。1988年より2年間、青年海外協力隊(現JICA海外協力隊)から派遣され、バングラデシュで活動。以後、同国を中心に調査・研究を続けている。