
世界屈指のハイテク国家を生み出した歴史と気風
『台湾ハイテク産業の「革新」』
熱意と好奇心による「いじくり回し」の歴史
Island Tinkerers: Innovation and Transformation in the Making of Taiwan’s Computing Industry
Honghong Tinn 著
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The MIT Press
| 448p


1.組織の再建
2.技術支援に関する交渉
3.新しい技術をいじくり回す
4.計算機を手に入れる
5.製造への希望
6.電子機器の組み立て
7.電卓の大量生産
8.非互換計算機の夢
9.計算機共和国
10.TSMCと21世紀の新しい地政学


TSMC(台湾積体電路製造公司)、Foxconn(鴻海精密工業)などを擁し、ハイテク製造分野において世界的な存在感を示す台湾。当初はハイテク分野の知見や産業資源へのアクセスに恵まれていなかった台湾は、どのような経緯で最新技術を学び、人材を育成し、現在の技術力と地位を確立していったのか。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の出版部門から刊行された未邦訳の本書では、1960〜1980年代の台湾において、学生や研究者らが、輸入されたコンピュータ技術を「いじくり回して」自分たちのナレッジを積み重ね、独自の製造技術やイノベーションを続けてきた歴史を明らかにしている。1960年代、国立交通大学(NCTU)にIBM製のコンピュータが設置された時から、国産コンピュータ製造という目標が生まれた。国産化には10年という長い年月が必要だったが、エンジニアや研究者たちは時には非正規的なルートで部品を調達しながら、開発を楽観的に楽しんでいたようだ。著者のホンホン・ティンは、ミネソタ大学ツインシティ校の科学・技術・医学史プログラムおよび電気・計算科学工学科の助教授。