
「観察」を有意義にするための四つの技法とは
『スロー・ルッキング』
よく見るためのレッスン
Slow Looking(2018)
シャリー・ティシュマン 著
| 北垣 憲仁/新藤 浩伸 訳
|
東京大学出版会
| 240p
| 4,620円(税込)


1.はじめに――スローということ
2.見るための方策
3.スローの実践
4.見ることと記述すること
5.博物館で見る、確かめる
6.学校で見る
7.科学のなかの「見る」
8.スロー・ルッキングと複雑さ
9.おわりに――スローから考える


さまざまな局面で「スピード」が重視されることが多い現代だが、その一方で、「スロー・フード」「スロー・ジャーナリズム」といった「ゆっくり」「じっくり」を見直す動きも出てきている。物事を「見る」などの知覚についても「スロー・ルッキング」という、時間をかけてじっくり観察することの効用が主張されている。

本書では、「ゆっくり見る」ことのベネフィットを、さまざまな角度から論じ、とくに教育学の立場から実践的な提案を行っている。スロー・ルッキング(ゆっくり見る技法)は、物事の複雑さを理解する手助けになるが、それはトレーニングによって習得可能だという。具体的な方策としては「カテゴリー」「オープン・インベントリー」「スケールとスコープ」「並置」などが紹介されている。著者はハーバード大学教育学大学院講師。同大学院の研究開発センターであるプロジェクト・ゼロのシニア・リサーチ・アソシエイト(主任研究員)。思考と理解の発達、芸術における学習、芸術を通した学習を中心に研究している。