

2024年12月、日本の自動車産業を代表する名経営者の一人が世を去った。スズキ四代目社長を務めた鈴木修氏だ。1930年に生まれ、銀行員時代にスズキ二代目社長の鈴木俊三に見出されて婿養子となり、58年に同社に入社。78年に社長就任後、2021年に91歳で会長を退くまで、43年間に渡ってスズキを牽引した。

本書は、鈴木修氏の生涯を多くのエピソードから描き出す評伝。氏の功績の一つは、軽自動車「アルト」の大ヒットによって、低迷していた市場を復活させるとともに、地方における移動手段としての軽自動車の地位を確立したことにあるようだ。また、後発かつ小型車を得意とするスズキが生き残るため、当時まだ注目されておらず、リスクが高いとされていたインド市場に進出した。EV化が進む中、小さな電池で動かすことができる軽自動車には、今後も大きな役割が期待される。著者はジャーナリスト。日刊紙「東京タイムズ」記者を経て、1992年に独立。『EVウォーズ』(日本経済新聞出版)、『キリンを作った男』(プレジデント社・新潮文庫)など、多数の著書がある。