

世界中で飲用され、一つの文化をも形成している嗜好品の代表格に「コーヒー」がある。コーヒー豆は、主に「コーヒーベルト」と呼ばれる赤道付近の地域で生産されるが、近年の気候変動の影響は避けられず、2015年には「2050年までに世界中のコーヒーの適作地域が半減する」とする論文が発表されている。

本書では、気候変動が激しさを増す中、コーヒーの生産現場で何が起きているのか、また危機に対してどのような対応策が取られつつあるのか、世界中の生産地の事例を国ごとに紹介しながらリポートしている。2015年発表の論文「一杯の苦いコーヒー」で示された「コーヒー2050年問題」については、その後も他の研究者が最新データをもとに検証を重ねたが結果は変わっていない。具体的な気候変動の影響としては「コーヒー栽培に適さない気温や降雨量になる」「大型化する熱帯低気圧の被害を受ける」「温暖化で発生する菌や害虫による植物感染症が広がる」などが危惧されている。著者は静岡文化芸術大学准教授。JTB関東、コスタリカ共和国環境エネルギー省(JICA海外協力隊)を経て横浜国立大学大学院環境情報学府博士後期課程修了(学術博士)。2021年より現職。