

世界最大級の自動車メーカーであるトヨタ自動車は、2026年3月期の見通しとして、2年ぶりとなる世界生産1000万台を発表するなど、依然として攻めの姿勢を崩していない。同社の特長のひとつに「人づくり」の伝統がある。トヨタの人づくりとは「人間力」を伸ばすこと。その実践の場として成果を上げているのが「トヨタ工業学園」である。

本書では、豊田章男会長をはじめとするトヨタの経営陣、現場の社員たちへの綿密な取材をもとに、トヨタ工業学園や生産現場での人材教育、すなわち「人づくり」の考え方と実践についてレポートしている。トヨタ工業学園は、トヨタ自動車創業の翌年である1938年に開校した豊田工科青年学校を前身とする企業内学校。現在は愛知県豊田市のトヨタスポーツセンターの敷地内に設置されており、中学を卒業した生徒が入学する3年間の高等部、工業高校を卒業した人が入る1年間の専門部がある。男女共学で定員は高等部が130人、専門部が120人。これまでに両方を合わせて2万人近くが卒業している。著者は人物ルポルタージュをはじめ、ビジネス、食や美術、海外文化などの分野で活躍中のノンフィクション作家。『TOKYO オリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。