
「非認知能力」獲得のための「体験」は必要か
『子どもの体験 学びと格差』
負の連鎖を断ち切るために
おおたとしまさ 著
|
文藝春秋(文春新書)
| 216p
| 1,045円(税込)


1.学力から非認知能力へ、お勉強から体験へ
2.子どもにとって本当に必要な体験とは何か?
3.裏山の秘密基地が消えた社会で


昨今、テストの点数などでは数値化しにくい力を指す「非認知能力」の重要性が説かれ、それを身に付けることを謳う習い事、自然体験、職業体験などのサービスも増えた。学校以外での体験機会の差を表す「体験格差」という言葉も登場している。では、こうした用意された体験は、本当に子どもに必要なのだろうか?

本書は、非認知能力が重要という認識が広がった結果、体験がコンテンツ化され消費されているとして警鐘を鳴らす。大人によって目的が設定された体験は、子どもにとっては、大人の意図に従うだけの行為になってしまう。本来、子どもに必要な体験は、何かを得たり学ぶためにさせられるものではなく、自ら考え、課題を設定し、夢中になるものだとする。対価を払ってサービスとしての体験をさせなくとも、「余白」を与えることで子どもは自ら思いつき、非認知能力を獲得していくという。著者は、教育ジャーナリスト。リクルートから独立後、数々の教育誌の編集に携わり、現在は独自の取材活動をもとに幅広い媒体に寄稿。『ルポ 塾歴社会』『21世紀の「男の子」の親たちへ』など、90冊以上の著書がある。