新書・文庫
発刊 2025.02
高齢者と女性の労働力が実質賃金に与えた影響
『日本経済の死角』
収奪的システムを解き明かす
河野 龍太郎 著 | 筑摩書房(ちくま新書) | 288p | 1,034円(税込)
Contents

1.生産性が上がっても実質賃金が上がらない理由
2.定期昇給の下での実質ゼロベアの罠
3.対外直接投資の落とし穴
4.労働市場の構造変化と日銀の二つの誤算
5.労働法制変更のマクロ経済への衝撃
6.コーポレートガバナンス改革の陥穽と長期雇用制の行方
7.イノベーションを社会はどう飼いならすか

Introduction
日本経済は、長く「失われた30年」と呼ばれる停滞を経験してきた。直近、インフレ傾向や日銀のマイナス金利の解除など、変化の兆しが見え始めているとはいえ、物価高に賃上げが追いつかないために家計が圧迫されて個人消費が伸び悩むなど、課題は多い。本格的な回復に向けて、何が求められるのだろうか。
本書は、「生産性が上がれば賃金も上がる」という通説に対し、日本ではこの関係が崩れていることを示すとともに、経済停滞の原因を、従来はあまり注目されてこなかった「死角」から明らかにする。実質賃金が上がらない一方で物価が上がる背景には、高齢者や女性を中心とする労働力の増加、残業規制の影響などがあるという。また、イノベーションによって実質賃金を上げるには、「平均生産性」より「限界生産性」を高める必要があるとし、収奪的ではなく包摂的なイノベーションの必要性を説く。著者は、BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト。東京大学先端科学技術研究センター客員上級研究員。1987年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行、大和投資顧問(現三井住友DSアセットマネジメント)、第一生命経済研究所上席主任研究員などを経て、現職。