

科学の進歩を担う世界の研究機関では、日々多様な研究が行われ、新発見や事実の解明が繰り広げられている。その成果は、科学論文として「ネイチャー」や「サイエンス」などの世界的学術誌に掲載される。意外性や驚きに満ち、ときに新たな発想のヒントともなるものだが、一般人がそれを目にする機会は多くない。

本書は、1日に少なくとも100本、年間延べ5万本の論文に接するという著者が、厳選した科学論文に、独自の視点や解釈を掛け合わせて紹介している。クジラとフクロウの眼球の光防御の方法が失明治療のヒントになるという話題から、多様な人々の交流が促進される都市の人口規模、また、DNA操作によって記憶力を高めたネズミが陥る意外な「不都合」まで、知的好奇心を掻き立てる論文が数多くとりあげられている。なお本書は、「週刊新潮」の連載「池谷裕二の全知全脳」を加筆修正してまとめたもの。ダイジェストでは、75本のコラムの中から3本をピックアップしている。著者は、薬学博士。東京大学薬学部教授。脳研究者。2024年に『夢を叶えるために脳はある』で第23回小林秀雄賞を受賞。『進化しすぎた脳』『生成AIと脳』など、著書多数。