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発刊 イギリス 2025.04
ピロリ菌と胃炎の関係を解明した「偽医師」とは
『「ニセモノ医療」の歴史』
Doc or Quack: Science and Anti-Science in Modern Medicine
Contents

序 道しるべ
1.「問題」との対峙
2.胃
3.眼
4.腰
5.不変と変化

Introduction
COVID-19パンデミックの最中、感染症の予防や治療に関して多くの政府や機関が「Follow the Science(科学に従う)」を掲げた。だが実際には、未知のウイルスゆえに科学的知見が日々変化し、何をもって「科学的」かの判断は難しかった。かくのごとく科学や医学は、その正当性をめぐり常に議論の的になってきた。
英国で刊行された未邦訳の本書では、近代医学の、19世紀の黎明期前後から現代までの変遷を辿り、正当性のある医療とそうはみなされない医療、「医師」と「偽医師」の境界線がどのように揺れ動いてきたかを、多くの事例を通じて明らかにしている。例えば、現時点で消化性潰瘍(PUD)の原因の一つにピロリ菌があることは医学常識になっており、発見者はノーベル生理学・医学賞を受賞した。しかし1982年に発見された当初は「胃で細菌は繁殖しない」との常識から、2人の発見者は偽医師扱いされたという。著者のサンダー・ギルマン氏は歴史学者。米国エモリー大学のリベラルアーツ&サイエンスの特別教授であり、精神医学の名誉教授。