

航空機産業は現状、民間の完成機メーカーとしては、ボーイングとエアバスの2社寡占状態にある。米国企業のボーイングは技術面や大規模な国際分業体制、認証制度との深い関わりなどにおいて圧倒的な競争優位にあったが、21世紀になってからは欧州発のエアバスの後塵を拝するようになった。同社の盛衰の要因は何か。

本書は、米国製造業の象徴の一つでもあったボーイングが、どのような戦略のもとグローバル市場における技術競争力を獲得したのかを論じている。ボーイングは、国際分業体制を構築する中で、完成機製造における「主翼」など中核技術は自社で担当しながら、さまざまな契約方式において、日本をはじめとする他国の優秀な技術を生かす戦略をとった。さらに、本来はFAA(連邦航空局)を通して国家が行うはずの認証実務の移譲を受けたことも同社の優位を高めることになる。しかし、これらの戦略が「諸刃の剣」となった面もあるようだ。著者は、立命館大学経営学部教授。大阪市立大学大学院経営学研究科で博士(商学)を取得後、立命館大学経営学部准教授を経て現職。共著書に『未来を考えるための科学史・技術史入門』(北樹出版、2023年)などがある。