書籍
発刊 2025.02
米国立公園が排除したオオカミを再導入した理由
『リワイルディング』
生態学のラディカルな冒険
REWILDING(2020)
ポール・ジェプソン / ケイン・ブライズ 著 | 管 啓次郎/林 真 訳 松田 法子 解説 | 勁草書房 | 224p | 3,300円(税込)
Contents

1 新しい地平
2 メガファウナ[大型動物群]がいた過去
3 地球の劣悪化
4 リワイルディング実践の起源
5 野生の自然
  ――さまざまなカスケード、空間、ネットワーク、エンジニアたち
6 地球システムへの影響
7 リワイルディングの政治と倫理
8 リワイルディングの規模を拡大する
9 リワイルディング──将来にむけての10の予測
解説 リワイルディングを希望にするレッスン

Introduction
世界的な環境保全の取り組みは1970年代から始まり、すでに半世紀の歴史がある。1992年の地球サミットでは、生物多様性条約(CBC)が採択されるなど、持続可能性に向けた議論と行動が本格化し、現在に至る。そんな中、これまでの「保全」の考え方を超える、先駆的な取り組みが注目されている。「リワイルディング(再野生化)」である。
本書では、生態系の回復をめざすリワイルディングについて、その基本的な考え方や先進事例を紹介し、将来についての予測を提示している。リワイルディングとは、ある地区・地域の生物多様性を最大限に高めるために、人間が現在の劣化した生態系に一定の刺激を与える取り組み。具体的には大型の草食動物や肉食獣など、そこの生態系の要としてはたらいてくれる種の群れをその土地に連れてくる。その後、そこで起こる変化を観察しながら、人間の管理や介入の度合いを減らしてゆき、生態系の自発的な回復を促すといった実践である。著者のポール・ジェプソン氏は、元オックスフォード大学「生物多様性、保全、管理」修士課程のディレクター、リワイルディングを進めるコンサルタント組織Ecosulis社の自然再生リーダー。ケイン・ブライズ氏は、Ecosulis社のマネージング・ディレクターで生息域回復の専門家。