

国・地域の経済発展における重要な要素の一つに「中間層の台頭」がある。賃金上昇の恩恵を受けた中間層の消費活動により企業が潤う、といった好循環が望めるからだ。今や有数の経済大国となった中国も例外ではない。中国における中間層の伸長に貢献したのは、上海と、同地で醸成された「海派文化」である。

中国で刊行された未邦訳の本書では、上海における中間層の台頭、拡大、変化の動きをレポートしている。歴史的に港湾都市として栄え西洋文化との交差場所であった上海が、政府による開発や外資導入政策によって経済都市に成長。教育や文化面で先進的な取り組みが続き、中間層の台頭を支えていったことなどを解説する。著者の李成氏は上海生まれ。ブルッキングス研究所ジョン・L・ソーントン中国センターの初の中国人所長であり、米国における中国研究の第一人者として知られる。