

「痛み」はたいていの人にとって不快であり、疾病や死にもつながるネガティブな感覚と捉えられることが多い。また痛みは、何らかの原因による人体の損傷を脳が感知して起こるものと思われがちだが、最近の研究でそれは間違いであることがはっきりしてきているという。では、痛みの本当の意味、役割は何なのだろうか。

本書では、20世紀の終わりくらいから盛んになった研究により明らかになってきた「痛みの本質」について、さまざまな事例や実験結果などを引き多面的に「痛み」を捉えながら論じている。痛みは、感知されて生じるものではなく、100パーセント脳でつくられ、われわれの身体を保護する「安全装置」なのだという。それが過保護になることで、持続痛が起きるともされている。著者は皮膚科医で、オックスフォード大学医学部リサーチ・フェロー。タンザニアの皮膚病調査についてのレポートで2017年にWilfred Thesiger Travel Writing Awardを受賞している。