

AIをはじめとするテクノロジーの進化が語られる際に「シンギュラリティ」が言及されることが多い。未来学者レイ・カーツワイル氏が約20年前の著書で2045年頃に訪れると予測した、人間が生物学的限界を超える、これまでのルールが適用できない世界への転換点を指す言葉だ。その到来がいよいよ現実味を帯びている。

本書では、2005年刊行の『シンギュラリティは近い』(NHK出版、紙版書籍邦題は『ポスト・ヒューマン誕生』)の著者が、シンギュラリティ到来の兆しともいえる技術進歩の現状と可能性を、汎用人工知能(AGI)、脳とAIの融合、ナノロボットの活用、寿命延長技術などのテーマで、最新の研究成果や理論を踏まえて論じている。著者の考えるシンギュラリティの中核にあるのは、ナノスケールのデバイスを使って脳とAIをつなぎ、人間の知能を指数関数的に拡張することだという。著者はAI研究開発の世界的権威。Googleで機械学習と自然言語処理の研究を率い、現在は同社の主任研究員兼AIビジョナリー。MIT在学中に起業して以来、音楽シンセサイザー「Kurzweil K250」など数々の発明品を世に送り出してきた。