

現代は不確実、不透明で、混沌とした時代といわれる。それに似て、おそらく多くの日本人に不安をもたらしていたであろう時代が、太平洋戦争開戦直前の数年かもしれない。その頃に雑誌「文學界」に連載され、それを元に1941年8月に発刊されたのが哲学者・三木清(1897-1945)による『人生論ノート』である。

本書は、発刊時と終戦直後など幾度もベストセラーとなり、時代を超えて読み継がれる『人生論ノート』の、1954年に出版された新潮文庫版。哲学者、社会評論家、文学者として昭和初期における華々しい存在であった三木清が、人生に関わる23のテーマのもと綴った論文集である。ダイジェストでは、「幸福について」「利己主義について」「秩序について」の3題を取り上げた。激動の時代を生きた哲学者の思索と感性は、80年以上の時を経ても鮮度を失っていない。著者は京都帝大で西田幾多郎に学んだ後、ドイツに留学、リッケルト、ハイデッガーの教えを受け、帰国後のデビュー作『パスカルに於ける人間の研究』で哲学界に衝撃を与えた。1930年治安維持法違反で投獄、その後も著作活動を続けるも再び検挙され敗戦直後に獄死した。