

世界情勢の変動の振れ幅は大きくなる一方だ。日本は地政学的リスクが高く、国際関係において重要な立場に置かれている。より一層の「外交力」が求められているといえるだろう。今後の日本外交のあり方を考えるうえで欠かせないのは、戦後の外交で培われた枠組みや政策の基礎について知ることではないか。

本書では、外務事務次官や駐米大使を経験した著者が、自らの経験も踏まえ、日本外交について議論するうえで踏まえておくべき「常識」を詳説している。現在の日本外交の出発点は、太平洋戦争終了後、1952年に発効したサンフランシスコ平和条約であり、これによって日本は独立を回復し、外交を再開することができた。この条約締結に際し話し合われ、決められたことが、その後の日米同盟関係、日露の平和条約交渉、日中関係や台湾問題、朝鮮半島との関係などに大きく関わっている。著者は早稲田大学特命教授。1977年外務省に入省し、在大韓民国日本国大使館公使、在エジプト日本国大使館公使、アジア太洋州局長、外務事務次官、アメリカ合衆国駐箚特命全権大使などを歴任した。