化石燃料ではなく海水に無尽蔵にある資源を使い、再エネよりも安定、高効率で、原発より安全で廃棄物も少ない「夢のエネルギー」の開発が国際協力のもと進められている。「核融合」だ。従来の原子力と混同されやすいが、今ある原発は「核分裂」であり、核融合はその正反対の反応を利用する。どんな技術なのか。
本書では、核融合にまつわる基礎技術の解説から、核融合発電実用化のための関連派生技術、核融合技術の国際協力の現状と課題、国家戦略などを網羅的かつ詳しく、わかりやすく解説。関連する各業界の動向やスタートアップの紹介も含め、新技術の有望性のみならず、今、どこで何が進んでいるのか、全体像を課題も踏まえて伝えている。日本の国家戦略では、すでに「研究」から「開発」のフェーズに移っており、日本も参加する国際共同研究プロジェクトITERでも、いくつかある「炉型」の中で「トカマク型」への絞り込みが行われたようだ。著者は、神戸大学科学技術イノベーション研究科教授(経営学研究科教授兼任)。専門は大学発スタートアップの経営。文科省核融合科学技術委員会委員、内閣府核融合有識者会議委員、QSTアドバイザリーカウンシル委員、その他政府・自治体委員多数を務める。