「脱炭素」に向けた再生可能エネルギー利用というテーマでは、「発電」を前提とした議論がなされることが多い。しかし、最終エネルギー需要で、電力は3割未満を占めるに過ぎない。現状、二酸化炭素排出量の大きな割合を占めるのは「運輸」分野であり、そこで脱炭素にもっとも有効として期待されるのが「バイオ燃料」である。
本書では、代表的なバイオ燃料である「バイオエタノール」にフォーカスを当てる。主にトウモロコシやサトウキビを原料とするバイオエタノールは、カーボンニュートラル、脱炭素に資するさまざまなメリットがあり、化石燃料の代替として、諸外国では普及してきている。そんなバイオエタノールの概要と現状、将来展望、これからのエネルギー政策まで含めて、4名の専門家が解説、提言を行っている。日本は政府の取り組みはあるものの、この分野については米国やブラジルをはじめとする他国から大きく後れをとっているようだ。著者の本間正義氏はアジア成長研究所特別教授、東京大学名誉教授。2010年から12年まで日本農業経済学会会長を務めた。横山伸也氏は、アメリカ穀物協会顧問。三石誠司氏は宮城大学副学長。小島正美氏は毎日新聞社を経て、東京理科大学非常勤講師、「食生活ジャーナリストの会」代表を歴任。食品安全情報ネットワーク共同代表。