国が重要視する資源が世界遺産に選ばれない理由
『日本人が知らない世界遺産』
林 菜央 著
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朝日新聞出版(朝日新書)
| 260p
| 990円(税込)
1.世界遺産の本当の魅力は「多様性」
2.世界遺産はどのように選ばれ登録されるのか
3.世界遺産のメリットとデメリット
付録 私のお薦め世界遺産とその見どころ
全世界で約1,200件、日本では26件が登録されている「世界遺産」。人類共通の責任をもって保全すべき「顕著な普遍的価値」を有する文化遺産や自然遺産、複合遺産が選ばれる。観光に大きくプラスになることから登録は喜ばしいことだが、一方で管理や保全の責任がのしかかり、時にデメリットも生じるようだ。
本書では、ユネスコに20年以上勤務する日本人唯一の世界遺産条約専門官が、理念や選定基準、登録プロセスといった世界遺産の概要とともに、現状の問題点を自らの体験や事例を多数まじえながら、リアルに解説している。1972年にユネスコで採択され、1975年に発効した世界遺産条約は、「国境を越えた人類共通の財産」という概念を広め、人間が創り上げた「文化」と「自然」をひとつの国際条約の中に統合するものだ。登録遺産の保全や管理は、原則登録国の責任となるが、著者をはじめとする専門官がしっかりとサポートするのだという。著者は、在フランス日本大使館で文化・プレス担当アタッシェを経て、2002年よりユネスコ勤務。ユネスコ・博物館プログラム主任、世界遺産条約局のアジア太平洋デスクの専門担当官などを務める。