経済成長と政情安定が一致しない国の持続可能性
『バングラデシュ・パラドクスの罠』
経済成長の果実を活かせるのか
Is the Bangladesh Paradox Sustainable?
1 バングラデシュの制度診断:序論
2 バングラデシュの発展:成果と課題
3 バングラデシュの発展のための重要な制度分野
4 非公式制度、RMGセクター、バングラデシュにおける輸出多様化の現課題
5 バングラデシュにおける民間銀行ガバナンスの政治経済
6 バングラデシュにおける税制改革の制度的側面
7 公共支出における制度的課題:初等教育のケース
8 バングラデシュにおける土地管理と行政の制度的課題
9 バングラデシュにおける土地収奪訴訟における司法の役割の政治経済分析
10 バングラデシュの制度診断:総括
反政府デモなど混乱が続いてきたバングラデシュで、ついにはシェイク・ハシナ首相が辞任、国外へ脱出する事態となった。政情不安定の一方で経済成長を遂げた「矛盾」が指摘されてきた同国だが、矛盾の解消とは逆方向に情勢が進展しているようだ。経済面でも今後の動きがますます不透明になってきている。
英国で刊行された未邦訳の本書では、この30数年間で世界第2位の既製服輸出国となり、近く「後発開発途上国」の地位を脱する見込みのバングラデシュが、その発展ペースを維持できるかどうかを、貿易や財政面に焦点を当てながら問う。政治的混乱や社会不安があるにもかかわらず、経済成長を遂げた同国のケースは、国家発展の「例外」であり、「バングラデシュ・パラドクス(バングラデシュの矛盾)」と呼ばれる。果たしてそれを解消することはできるのか。編者のセリム・ライハン氏はバングラデシュ・ダッカ大学経済学部教授、南アジア経済モデリング・ネットワーク(SANEM)事務局長。フランソワ・ブルギニヨン氏はパリ経済大学名誉教授、パリ社会科学高等研究院(EHESS)名誉教授。ウマル・サラムはオックスフォード・ポリシー・マネジメントのプリンシパル・エコノミストで、経済発展と制度(EDI)プログラムの科学委員会メンバー。