2014年からナレンドラ・モディ政権下にあるインドを形容するのに「人口世界一」「GDP急成長」「世界最大の民主主義国」「グローバルサウスの盟主」といった言葉が使われることが多い。「超大国」への道をひた走っているとも言われる。しかし、これらはインドの実情をどれくらい反映しているのだろうか。
本書では、現モディ政権における、権威主義的で「大国幻想」を抱かせるかのような、政治・経済・社会・外交施策の数々を示す。さらにそれに国民が反発することなく、モディ人気が維持される、といった「モディ化」が進行するインドの実像を描き出す。多宗教・多民族国家であるインドは、独立以来、「国を率いるリーダー層は特定の宗教の影響から独立すべきだ」として「世俗主義」の方針をとってきたが、モディが首相に就任してからは「ヒンドゥー至上主義」ともいえる動きが目立つ。とくにムスリムとの間に深刻な分断が起きているようだ。著者は、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所地域研究センター研究員。インドを中心とする南アジアの政治経済を専門とする。