世界第2位の巨大たばこ市場をめぐる大手の戦略
『インドネシアの“たばこ”資本主義』
香料入りたばこ「クレテック」製造企業の規制回避と人材戦略
Kretek Capitalism: Making, Marketing, and Consuming Clove Cigarettes in Indonesia
Marina Welker 著
|
University of California Press
| 264p
1.クレテック農業
2.手巻きクレテック
3.機械巻きクレテック
4.クレテックのブランディング
5.クレテックの販売
6.クレテックの喫煙
インドネシアの伝統的なたばこに「クレテック」がある。タバコ葉にスパイスの一種であるクローブを混ぜて作られたたばこで、同国のたばこ市場の大半を占める。独自の文化としての価値を持ち、主要産業の一角でもある一方で、近年は外国資本による大量生産が進んでおり、労働搾取や健康被害といった問題が浮上している。
米国で刊行された未邦訳の本書では、インドネシア最大手のクレテックメーカーであり、現在はフィリップ・モリス・インターナショナルのインドネシア子会社であるサンポエルナを中心に、インドネシアのたばこ産業の実態を描く。クレテック製造に携わる工場労働者やマーケティング関係者、市井の喫煙者などへ取材しながら、クレテックが伝統文化として母国への愛着や誇りを刺激していること、クレテック産業がさまざまな方法を使って労働力を確保したり、巧みな広報戦略によって若者の前向きな労働を引きだす点など明らかにしている。著者のマリナ・ウェルカー氏は米コーネル大学人類学部准教授。東南アジアの資本主義、消費財などについて、エスノグラフィーによる分析を専門とする。