新書・文庫
発刊 2024.04
書籍購入費は落ちても自己啓発書が売れる理由
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
三宅 香帆 著 | 集英社(集英社新書) | 288p | 1,100円(税込)
Contents

まえがき 本が読めなかったから、会社をやめました
序.労働と読書は両立しない?
1.労働を煽る自己啓発書の誕生―明治時代
2.「教養」が隔てたサラリーマン階級と労働者階級―大正時代
3.戦前サラリーマンはなぜ「円本」を買ったのか?―昭和戦前・戦中
4.「ビジネスマン」に読まれたベストセラー―1950~60年代
5.司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン―1970年代
6.女たちのカルチャーセンターとミリオンセラー―1980年代
7.行動と経済の時代への転換点―1990年代
8.仕事がアイデンティティになる社会―2000年代
9.読書は人生の「ノイズ」なのか?―2010年代
最終.「全身全霊」をやめませんか
あとがき 働きながら本を読むコツをお伝えします

Introduction
一般に「仕事が忙しく、好きな本を読む時間がとれない」「スマホばかりを見て本を読まなくなった」といった悩みをもつ人は少なくない。一方で、書籍売上は減っているとはいえ、自己啓発書やビジネスのノウハウ本を中心にベストセラーは頻発している。そこには労働時間や「働き方」以外の理由があるようだ。
本書では、当書タイトルにある問いの答えを探るために、日本における明治時代からの「仕事と読書」の歴史、人気の書籍ジャンルやベストセラー書籍の変遷などを分析しながら、労働や、現代特有の社会意識の問題点などを指摘している。現代に生きるわれわれは、インターネットの普及などにより、情報が容易に手に入るようになったことから、「欲しい情報」以外の知識を「ノイズ」として除去する傾向にあるという。著者は、1994年生まれの文芸評論家。『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社)など多数の著書がある。