直近、株高や新NISA(少額投資非課税制度)開始の追い風を受けて、国内証券各社の業績は好調だ。しかし、手数料の低いネット証券の台頭もあって、大手証券会社の営業員はあらためてその存在意義を問われている。そんななか、意外な営業スタイルで業績を伸ばしているのが大和証券シンガポールの富裕層向けサービスだ。
本書は、閉鎖目前まで追い込まれていた大和証券シンガポールが、10年ほどで預かり資産1兆円を実現したストーリーを追っている。シンガポールに送り込まれた国内のトップ営業員たちは、シンガポールに移住した日本人富裕層向けに、古風な営業スタイルと思われがちな「おもてなしスピリット」を発揮して顧客を増やしていった。シンガポールで築いた知見は、今後、国内の地方支店にも活用できる可能性があるようだ。著者はノンフィクション作家。1957年東京都生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て現職。『スバル ヒコーキ野郎が作ったクルマ』『名門再生 太平洋クラブ物語』(共にプレジデント社)、『警察庁長官 知られざる警察トップの仕事と素顔』(朝日新書)など、著書多数。