日本全国にはいくつかの「産業集積地域」があり、セイコーエプソンなどの精密機械工業をはじめとする機械金属関連産業が集積する長野県の諏訪地域はよく知られている。同県内において近年、製造品出荷高で諏訪地域を抜き、県内3位の工業地域となったのが、諏訪の南側に隣接する「上伊那地域」である。
本書では、特に中小企業に焦点を当てながら、長野県上伊那地域の産業構造がどのような変遷を経てきたか、諏訪地域との関係も探りながら分析。同地域がなぜ今日の発展を遂げることができたのかを、著者による1993年と2015年の2回の現地調査、過去の研究成果、各種データなどを総合して論じている。上伊那地域には、KOA、オリンパス長野事業所辰野、ルビコンなどの大手メーカーがあり、かつてはそれらの企業と取引をおこなう多くの「組立型」中小企業があった。しかし、2000年代には組立型企業が激減し、加工型企業が台頭するという大きな変化が見られるという。著者は大阪商業大学総合経営学部教授で中小企業論、地域経済論、地場産業論、工業経済論を専門とする。なお、本書では、中小企業については略記による仮称で記されている。