

ネット上の言論空間では、有益な交流が行われる一方で、抗議や非難、罵倒がある対象者に集中する、「炎上」と呼ばれる現象がよく発生する。元は些細なことでも、当事者の自殺や社会的地位の喪失につながることもある。そうした発言の多くは「社会正義=弱者へのやさしさ」からくるものであったりもする。

本書では、人を襲ったクマの駆除に対する抗議、BLM運動、ALPS処理水海洋放出問題、反ワクチンなど炎上や風評被害の事例を挙げながら、被害者であった「弱者」が、「ポリティカル・コレクトネス」や社会正義を掲げるメディアやネット上の第三者から共感を得て、それを武器に「強者」となり、他者を激しく攻撃することで新たな被害者=弱者を生み出す、現代の歪んだ社会構造を分析。それに抗うために何をしたらいいのか、具体的に提言している。社会学者の研究によると、従来の社会には「名誉の文化」と「尊厳の文化」があり、人々の争いごとなどについて利害関係者のバランスをとっていたが、近年はこれらに代わって「被害者文化」が台頭してきているという。著者は1979年生まれ、福島県出身・在住の著述家・ジャーナリスト。著書に『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』(徳間書店)などがある。