バリューチェーンを支配する大手焙煎会社の戦略
『スペシャルティコーヒーの経済学』
Cheap Coffee(2021)
カール・ウィンホールド 著
| 古屋 美登里/西村 正人 訳 福澤 由佑 監修・解説
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亜紀書房
| 488p
| 3,080円(税込)
1.コーヒー経済学入門
2.国際的なバリューチェーン
3.農園のあり方
4.持続可能性を問う
5.解決策──運まかせか否か
100円程度で飲めるコンビニコーヒーから、1杯1,000円のスペシャルティコーヒーまで、私たちがコーヒーを楽しめるのは、中南米をはじめとする生豆の産地を原点とするバリューチェーンのおかげだ。しかし、高価なスペシャルティコーヒーの原料を生産する農家は、それに見合う収入が得られていないという。
本書は、原産地を困窮させない、持続可能で倫理的なコーヒーのバリューチェーンを構築するにはどうすべきか、現状を経済学的に緻密に分析した上で、その方策を探っている。コーヒーのグローバルなバリューチェーンには、生産者、輸出業者、輸入業者、焙煎業者、小売店などが連なっているが、その中でも、世界規模のサプライチェーンを構築する大手の焙煎会社が大きな力を持っており、生産者との富の格差が広がる一方のようだ。著者は長年、経営コンサルティングとコーヒーの国際交易に携わり、2013年にコロンビアの零細コーヒー農家の権利向上を提唱する共同組合「セドロ・アルト」を創設。アリゾナ州のコーヒーブランドSwillings Coffeeの共同創設者にして生豆バイヤー、製品オペレーションマネージャーも務める。