中国の農村の「競争選挙」がもつ本当の意味とは
『中国農村の現在』
「14億分の10億」のリアル
田原 史起 著
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中央公論新社(中公新書)
| 304p
| 1,056円(税込)
序.中国農村の軌跡
1.市民との格差は問題か?――農民の思考様式
2.農村はなぜ崩壊しないのか?――村落生活の仕組み
3.なぜ村だけに競争選挙があるのか?――農村をめぐる政治
4.中国農村調査はなぜ失敗するのか?――「官場」の論理
5.農村は消滅するのか?――都市化政策と農村の変化
終.中国農村の未来
中国は、名目GDPにおいて米国に次ぐ世界第2位だ。その中国において、農村に暮らす農民やそこにルーツを持つ「農村関係人口」は全14億人中の10億人を占めるといわれる。中国の農村について知ることは、政治や経済について深く知るうえでも欠かせない。彼らは何を考え、どんな生活を送っているのか。
本書は、中国の農村の歴史を紀元前から振り返り、農民が現在も大切にする家族主義の精神や思考様式の起源を明かすとともに、彼らの日常や1990年代以降に広がった出稼ぎの実態などを紹介する。著者は、山奥の村落を訪れ、現地の農民の家に泊まり込んで、人々の暮らしぶりを調査しつつ、中国共産党中央の意図も浮き彫りにする。例えば、中国の農村では、同国の政治システムのなかで唯一「競争選挙」が行われているが、その狙いは「民主化」ではないようだ。なお、本書にある人名および県以下の地名はプライバシー保護のため仮名である。著者は東京大学大学院総合文化研究科教授。1967年、広島県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了、社会学博士。専攻は農村社会学、中国地域研究。新潟産業大学人文学部講師、東京大学大学院総合文化研究科准教授などを経て現職。