大規模な災害が発生するたびに、日本ではボランティアのあり方が議論される。若者を中心にボランティアは特殊なものではなくなってきた一方で、欧米に比して寄付文化が育っていないといった指摘もまだある。伝統的に利他の心があるともされる日本人だが、なぜあまり寄付をしたがらないのだろうか。
本書では、20人の執筆陣が、「寄付」について国内外のこれまでの研究知見をもとに、多岐にわたるテーマのもと論じている。各種データによると、日本では個人で寄付を行う人は、他国に比べて少ない。だが、地域の助け合いなどは昔から当たり前のように行われてきた。そこに、集団の内部では利他の心を発揮するが外部には厳しい、集団主義的な思考や価値観が埋め込まれているとみる向きもある。時代の価値観が変化する中、寄付行動も変わりつつあるようだ。編著者の坂本治也氏は、関西大学法学部教授、日本寄付財団寄付研究センター長。政治過程論、市民社会論を専門とする。なお、ダイジェストは、坂本氏と、東京大学大学院教育学研究科教授の仁平典宏氏の論考から抜粋した。