気候変動の原因となる最大の容疑者とされる化石燃料は、同時に枯渇の危機にも見舞われている。同様に枯渇が懸念されるとともに環境汚染の元凶となっており、人類の生存に欠かせないものでありながら、一般にはさほど意識されることのない物質が「リン」である。この希少資源はどんなリスクをもたらすのか。
本書では、ピューリッツァー賞最終候補に2度選ばれたジャーナリストが、希少資源リンをめぐり現在生起している深刻な諸問題について、綿密な取材をもとにリポートしている。リンはヒトをはじめとする生物の成長や生存に必要不可欠な元素である。そもそも生命の源であるDNAはリンでできている。農業に使われる肥料もリンであり、それが不足すれば食糧危機を招きかねない。ところが、リンが得られる鉱床は希少であり、現在、そのほとんどをモロッコが独占している状況だ。一方で農業肥料に使われたリンが湖に過剰に流入し、毒性の藻類を大量発生させるといった問題も起きている。著者はミルウォーキー・ジャーナル・センチネル紙の記者で、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校に淡水科学部シニアフェローとして在籍中。