通勤・通学、買い物などの「足」として、特に鉄道が行き渡っていない地方において欠かせないのが「路線バス」だ。だが、バス業界もご多分にもれず人手不足に悩んでいるようだ。公益社団法人日本バス協会の2021年10月の調査では、885社のバス会社のうち56%の493社が「運転手が不足している」と回答したという。
本書では、神奈川県の大手私鉄系バス会社にドライバー(運転士)として勤めていた著者が、幼少期からの「憧れの職業」であったバスドライバーに47歳で高校教師から転職、59歳の時に退職を余儀なくされるまで、バスドライバーとして体験したさまざまなエピソードを、ユーモアを交えて語っている。著者は大学卒業後、公立中学校に臨時的任用教員として就職するが、やりがいを見失い、29歳で退職。専門学校や塾の講師を経て、36歳で高校の社会科講師に。その後、幼いころからの夢であった「乗り物の運転手」になりたいという気持ちが頭をもたげ、家族(妻と二女)を説得し憧れの職業に就く。著者は1962年、神奈川県生まれ。バス運転士を12年間勤めた後に退職、現在は施設警備員として働く。なお、本文中の社名および人名はすべて仮名である。