組織のDX(デジタル・トランスフォーメーション)など、「デジタル」という言葉がもてはやされる昨今だが、実はコンピュータなどによる情報処理や人類の知的活動が「アナログ」に回帰しつつあるという。人間の脳をはじめとする自然界はアナログであるが、そこに戻るとはどういうことだろうか。
本書では、18世紀初頭からの自然や人類とマシンの関係における歴史を、さまざまな場面を活写しながら辿り、アナログからデジタルへ、そして再びアナログが台頭する現象について論じている。1741年に法律家、哲学者で数学者のライプニッツは当時のロシア皇帝ピョートル皇帝に、デジタル・コンピューティングの原型となる計算推論を政策に取り入れる計画を提案した。それから200年以上を経てデジタルのマシンによって人間が自然を支配する世界が出現したように見えた。だが、ここに来てアナログが戻ってきたのである。著者は科学史家で著書に『チューリングの大聖堂』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)がある。父は世界的な物理学者のフリーマン・ダイソン。なおタイトルの「アナロジア」とはアナログを意味する、ギリシャ語からラテン語に受け継がれた言葉である。