イタリア半島の南西に位置するシチリア島から、映画『ゴッドファーザー』を連想する人は多いだろう。実際、多くの観光客が映画のイメージを求めてシチリアを訪れるという。しかし、住民たちは長年にわたってマフィアと闘い続けてきた。現在も、町の負のイメージを払拭するためのさまざまな活動が行われている。
本書は、19世紀以降にシチリアでマフィアが勢力を持った背景や、命をかけて闘ってきた人々の姿、また、現在行われている取り組みなどを丁寧に取材し、紹介している。シチリアに適した柑橘栽培が国際市場に注目され、主に農産物の輸送の際の護衛、また安い労働力を管理する役割としてマフィアが生まれたという。近年は、暗い歴史とイメージを覆し、次世代に美しい島を残すために、マフィアからの押収地をオーガニックの畑にする活動や、人や環境に負荷をかけず、不正とも無縁のエシカル消費が推進されているようだ。著者はノンフィクション作家。1963年長崎生まれ、福岡育ち。東京藝術大学卒。著書に『スローフードな人生!』『スローシティ』『エクソシストとの対話』などがある。