2021年に開催された東京五輪で、開会式に関わる演出家やミュージシャンによる過去の差別的言動などがネット上で糾弾され、直前に降板する事態になったことは記憶に新しい。このような「炎上」騒ぎは、とくにツイッター上で日常的に発生している。こうした過激な「正義」の暴走はなぜ起きるのだろうか。
本書では、大量の批判や誹謗中傷が飛び交うツイッターで、反差別などの「正義」がどのように主張されているかを分析し、現代に必要な正義のあり方を探っている。自分が信じる正義を絶対的なものとして、文脈を無視して一方的に相手を攻撃するツイッター上の振る舞いを、著者は「こどもの正義」とみなす。それに対し、他者への共感と信頼をベースに、文脈をしっかり読んだ「おとなの正義」を身につけるために、使うべきではない「マジックワード」があるのだという。著者はNPO法人風テラス理事長。風俗で働かざるを得ない女性への支援など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。