新書・文庫
発刊 2022.12
組織を合理的な失敗に導く「黒い空気」とは何か
『指導者(リーダー)の不条理』
組織に潜む「黒い空気」の正体
菊澤 研宗 著 | PHP研究所(PHP新書) | 279p | 1,155円(税込)
Contents

序.日本の戦史にみる失敗の真因
1.「不条理」への経済学的挑戦
2.「不条理」への経営学的挑戦
3.「不条理」への哲学的挑戦
結.不条理な「黒い空気」に支配されないための処方箋

Introduction
政府や企業における組織ぐるみの不正や改ざん、無謀な施策などの「失敗」は、いつの時代にも発生する。日本の近現代史でもっとも大きな失敗に第二次世界大戦の敗戦を挙げる人は多いだろう。日米開戦の決定がそもそも失敗だったという指摘もある。これと、近年の企業不正の原因には共通するものがあるようだ。
本書では、組織の指導者が合理的に判断したのに失敗するという「不条理」が発生した時にみられる、指導者たちの「やましき沈黙」が広がる状態を「黒い空気」の支配と呼び、その状態を避ける上で何が指導者に求められるかを経済学、経営学、カント哲学の側面から論じている。評論家の山本七平が1977年に発表した『「空気」の研究』(文春文庫)で示した空気論では、組織内に蔓延する非合理な空気によって指導者たちが誤った判断をするとしているが、著者はそれに与しない。あくまで指導者は合理的な判断をするが不正などの「失敗」に至るとし、山本の理論を超える新たな空気論が、現代企業の経営を改善する上で必要として論を展開する。著者は慶應義塾大学商学部商学研究科教授。同大学大学院博士課程修了後、防衛大学校教授、中央大学教授などを経て2006年から現職。新制度派経済学(組織の経済学)とダイナミック・ケイパビリティ論を専門とする。