新書・文庫
発刊 2022.11
長野を「蕎麦王国」にした2つの地学現象とは
『「美食地質学」入門』
和食と日本列島の素敵な関係
巽 好幸 著 | 光文社(光文社新書) | 296p | 946円(税込)
Contents

1.旅立ちの前に
2.変動帯がもたらす日本の豊かな水
3.火山の恵みと試練
4.プレート運動が引き起こす大地変動の恵み
5.未来の日本列島の姿と大変動の贈りもの
6.日本列島の大移動がもたらした幸福を巡る旅
7.地球規模の大変動と和食

Introduction
「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されたことからもわかる通り、日本人は、各地でその土地の豊かな自然や食材を生かし、独自の食文化を築き上げてきた。しかし、そもそもなぜ日本列島は、多様で美味しい食材に恵まれているのだろうか。背景には、意外にも「地質学」的な要因があるようだ。
本書は、地球や日本列島の歴史などを調べてきた「マグマ学者」の著者が、日本列島と和食の関係を「美食地質学」として考究し、まとめたものだ。和食の食材が育まれてきた背景には、火山活動やフィリピン海プレートの運動など、地球や日本列島のダイナミックな営みがあるという。蕎麦処が活火山の近くに多いのは、ソバが火山性土壌でも育つ特性を持つことが理由の一つだ。また、筋肉質な魚を育む瀬戸内海の潮流の速さは、「瀬戸」「海峡」「灘」からなる独特の地形に関係する。著者は、地球の進化や超巨大噴火のメカニズムを「マグマ学」の視点で探究している。1954年、大阪府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了。京都大学総合人間学部教授、東京大学海洋研究所教授、神戸大学海洋底探査センター教授などを歴任。