新書・文庫
発刊 2022.11
水道局ベテラン職員の暗黙知を学んだAIの可能性
『水道を救え』
AIベンチャー「フラクタ」の挑戦
加藤 崇 著 | 新潮社(新潮新書) | 206p | 858円(税込)
Contents

1.日本の水道インフラは今どうなっているか
2.見えない水道管をいかにして読み取るか
3.世界の水道インフラは今どうなっているか
4.日本、動き始めた自治体は何が違うのか
5.日本の水道事業は民営化していくのか
6.水道事業の“価値”を正しく知っているか
7.水道インフラを守り続けられるか
最終.フラクタと僕はなぜ走り続けるのか

Introduction
日本は、蛇口をひねれば安全な飲み水が手に入る優れた水道インフラを持つ。しかし近年、老朽化によって水道は危機的な状況にあるという。国内で起きる漏水・破損事故は、毎年2万件以上。水道管をいかに効率よく補修・交換し、水道インフラを維持するかは、日本だけでなく世界で課題となっているようだ。
本書は、英米など各国の水道状況や、水道ビジネスを手掛ける巨大企業の収益重視の実態を明かした上で、AI(人工知能)を使ったソフトウェアによるシミュレーションによって、交換すべき水道管を判別する事業を手掛ける「FRACTA(フラクタ)」の取り組みをたどる。フラクタは、水道管の素材や形状だけでなく、埋まっている土壌、天候など環境の情報も組み合わせ、水道管が劣化するパターンをAIに覚え込ませたという。フラクタの技術を活用する自治体では、AIによる予測の正確さも実証されつつあるようだ。著者は、フラクタ創業者で現会長。早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。東北大学特任教授(客員)。2012年に共同創業した二足歩行ロボットを手掛ける株式会社シャフトは、13年に米グーグルに買収された。15年、米シリコンバレーでフラクタを創業、2021年12月までCEOを務めた。