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発刊 アメリカ 2022.02
貧困街におけるデジタル活用の意外な実態とは
『ブラジル大都市の貧困層を救う「IT寺子屋」』
Technology of the Oppressed: Inequity and the Digital Mundane in Favelas of Brazil
David Nemer 著 | The MIT Press | 230p
Contents

1.イントロダクション
2.壊れた都市を修復する
3.「ありふれたテクノロジー」としてのコミュニティ・テクノロジー・センター
4.生き残るためのソーシャルメディア
5.誇り高きファヴェーラダス
6.抑圧の地理学:沈黙の空間を明らかにする
7.強者のテクノロジー
8.希望のテクノロジー:虐げられた人々のテクノロジーを追体験する

Introduction
南米最大の2億人以上の人口と広大な国土面積を有するブラジル。経済成長が著しい一方で、貧富の格差の拡大と、それに伴うスラム街の増加が深刻化している。だが、都市部のスラム街で苦しい生活を強いられる住民たちは、「ある場所」を活用することで能力を高め、人生を上向きにしようと奮闘しているようだ。
未邦訳の米国書籍である本書では、「ファヴェーラ」と一般に呼ばれるブラジルのスラム街の住民たちの情報通信分野との関わりとその効果、社会的な意義を、現地調査をもとに詳細に描いている。住民たちが自由にインターネットやデジタルデバイスにアクセスできる公営の「テレセンター」および私営の「LANハウス」は、住民たちの安全な居場所や、教育の場ともなっている。それにより、「コミュニティの力」と個々人の能力、社会的なステータスを向上させる可能性があるという。著者のデイビッド・ネメー氏はヴァージニア大学准教授で、メディア研究を専門とする。