株主重視のコーポレートガバナンス改革、CSR、ESG経営など、欧米発の企業経営モデルの導入を迫られ、苦慮する日本企業も多いのではないだろうか。だが、日本社会は歴史上、何度も外来のシステムや理念を受け入れ、うまく折り合いをつけて発展、繁栄してきたといえる。そのカギは「中二階」にあるようだ。
本書では、日本の企業経営、社会経済、統治システムなど、さまざまな組織や場面に見られる特徴から「中二階の原理」を見出し分析、経営戦略などに活かす道を探っている。「中二階」とは、建築物によくある、一階と二階の間にある空間の一部を使って作られたフロア。原理・原則(二階)と、現場の事情(一階)に「ねじれ」が生じ、二階の方針通りに一階で実行するのが難しい場合に、「中二階を挿入する」という方法をとる。たとえば「企業は株主のもの」という二階の原理が実際の日本企業の感覚にはそぐわないため、「企業は従業員のもの」という中二階の原理を挿入し、両者に配慮して経営を進める、といったケースが該当するという。著者は経営学者で、国際大学学長、一橋大学名誉教授。一橋大学商学部教授、スタンフォード大学客員准教授、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授などを経て2017年から現職。