新書・文庫
発刊 2022.08
いかに京都の人々は自然と共存していたのか
『京都の山と川』
「山紫水明」が伝える千年の都
鈴木 康久 / 肉戸 裕行 著 | 中央公論新社(中公新書) | 272p | 1,012円(税込)
Contents

1.東山――歴史と景観に彩られた山紫水明の地
2.北山――都を支えた農山村と自然
3.西山――信仰と竹林の道
4.鴨川――暮らしに応じて役割を変えてきた水辺
5.桂川――平安を語る「別業の地」と「水運」
6.宇治川――秀吉が造った新たな河道
7.琵琶湖疏水――社会の求めに応じて進化する水路
8.洛中の川――千年の間に生まれる川、失われる川
終.山と川の価値を考える

Introduction
日本を代表する一大観光地である京都。平安京に遷都されて以来、およそ1000年にわたり都として歴史を紡いできた。京都は三方を山に囲まれた盆地であり、鴨川、桂川、宇治川といった河川が、やはり三方に流れる。山河が社寺と相まって美しい景観を作り出すとともに、時代ごとの人々の生活とも深く関わってきた。
本書では、京都の三山(東山、北山、西山)、および河川や人工水路である琵琶湖疏水を、歴史、地質学、植生などさまざまな角度からのエピソードとともに紹介。災害に悩まされつつも、自然と共存しながら暮らしてきた人々の姿を浮き彫りにしている。比叡山山系では、脆い花崗岩を中心とする地質ゆえに、水害に弱く、たびたび土砂災害に見舞われていた。さらに都の燃料需要を賄うために、山中から薪や柴を刈り続けたために、山が痩せ、裸山に近い状態になっていたという。エネルギー源が化石燃料に変わってからは再び山の植生が変わり、防災や風致の理由による森林保護や植林が行われたことから、京都の山々は緑を取り戻している。著者の鈴木康久氏は京都産業大学現代社会学部教授。博士(農学)。肉戸裕行氏は京都府立植物園副園長を務める。