新書・文庫
発刊 2022.07
不安やうつを引き起こす防御システムとは何か
『ストレス脳』
Depphjärnan(2021)
アンデシュ・ハンセン 著 | 久山 葉子 訳 | 新潮社(新潮新書) | 255p | 1,100円(税込)
Contents

まえがき――なぜ人は不安から逃れられないのか?
1.私たちはサバイバルの生き残りだ
2.なぜ人間には感情があるのか
3.なぜ人は不安やパニックを感じるのか
4.人はなぜうつになるのか
5.なぜ孤独はリスクなのか
6.なぜ運動でリスクを下げられるのか
7.人類の歴史上、一番精神状態が悪いのは今なのか?
8.なぜ「宿命本能」に振り回されてしまうのか?
9.幸せの罠

Introduction
古代から近代までと比較すると、現代の私たちははるかに恵まれた、快適な生活を送っている。それなのに、不安を抱える現代人は多く、うつ病患者も増加傾向にある。なぜなのか。それは、私たちの脳の仕組みが、狩猟採集時代からほとんど変わっていないからという説がある。どんな仕組みなのだろうか。
本書では、『一流の頭脳』(サンマーク出版)、『スマホ脳』(新潮新書)といった世界的ベストセラーの著書があるスウェーデン出身の精神科医が、脳科学の見地から人類の歴史を通した、不安やうつを引き起こすメカニズムを探り、その対処法を提案している。「不安」は、予期されたストレス、「うつ」は長期的なストレスに対する脳の防御システムであり、それらが起こるのは生物として健全な反応であると説く。太古の狩猟採集民だった頃と、現代人の脳の基本的メカニズムはほぼ同じであり、肉食獣などの命に関わる敵や、今よりもずっと高かった感染症リスクに備えるように働いてしまい、たとえば感染しないように閉じこもり、ウイルスと闘う免疫系のエネルギーを温存するために気分を落とすのが、うつの正体なのではないかと主張している。著者は1974年生まれの精神科医で、スウェーデンで国民的人気を得ている。カロリンスカ医科大学で医学を学び、ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得。