書籍
発刊 2022.06
極北の地での過酷な調査で地質学者は何を見たか
『極限大地』
地質学者、人跡未踏のグリーンランドをゆく
A WILDER TIME(2018)
ウィリアム・グラスリー 著 | 小坂 恵理 訳 | 築地書館 | 240p | 2,640円(税込)
Contents

はじめに――人跡未踏の極限の大地“ウィルダネス”を経験する
      ということ
序章――人間として科学者として大自然の中で理解できること、
    できないこと
1.再発見
2.統合
3.発現
終章
おわりに――ウィルダネスを共有することの意味

Introduction
気候変動や大地震、火山噴火などの対策に必要な知見が得られる学問の一つに、地球がどのようにでき上がったのか、これからどう変化するのかを探る地質学がある。地質学の実地調査は過酷をきわめる。人が足を踏み入れたことのない荒野を歩き回り、崖をよじ登り岩石を採取するなどの活動が求められるからだ。
本書は、米国人地質学者である著者が、二人のデンマーク人地質学者とともに、国土の大半が北極圏にあり、地表の8割以上が氷床に覆われたグリーンランドで地質調査を行った記録。はるか昔、グリーンランドでは大陸が移動して別の大陸とぶつかって縫合し、その影響により標高の高い山脈が形成されていたという仮説を検証するために、前人未到の氷の大地を探索し、岩盤や地層、岩石を調べる。その過程で遭遇した大自然の美に感嘆し、極寒の地で暮らす生き物たちに思いを馳せる著者。そして時間と空間、記憶などについて哲学的に考察している。著者はカリフォルニア大学デービス校の地質学者。デンマークのオーフス大学の名誉研究員で、大陸の進化とそのエネルギー源となるプロセスを研究している。