トヨタ自動車の「ウーブン・シティ」計画をはじめ、民間企業が主導して、最新テクノロジーを用いた新しい都市づくりを進めるケースが目立ってきている。同様の動きが、およそ100年前のアメリカでもあった。フォード・モーター創業者ヘンリー・フォードによる“テクノ・ユートピア構想”である。
本書は、1920年代アメリカでヘンリー・フォードが友人である発明王トーマス・エジソンの協力のもと、アラバマ州マッスル・ショールズに建設しようとして、結局実現には至らなかった、斬新な「夢の町」構想をめぐる顛末を中心に、アメリカ社会の変遷を描いたノンフィクション。二人の事業家が南北戦争からの南部の復興のために水力発電ダムを建設することを志し、さらに第一次世界大戦の軍需で硝酸塩製造工場が建設されたマッスル・ショールズだが、終戦後に必要なくなり、政府が売却先を公募。それに入札したのが、自動車業界を征服して巨額の富を築いたヘンリー・フォードだった。著者は医化学系ジャーナリスト。米国国立がん研究所で勤務したのち、フリーランスのライターとなり、医療関連の記事をAmerican Health, Journal of the American Medical Associationなどに寄稿。