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発刊 2022.07
米国でも懸念される基礎研究の減少と競争優位
「国の技術的優位性を守るために大企業にできること」(Dialogue)
Protecting America’s advantage
Introduction
量子コンピュータ、AI、電気自動車(EV)、生命科学など、今後の大きなトレンドを左右する新領域の研究を巡る世界的な競争が激しさを増している。世界をリードする米国では、企業による研究開発(R&D)予算の増加傾向が続いている。だが、予算のうち、基礎研究に当てられたのはわずか7%(2019年)にすぎない。
ビジネス誌「Dialogue」2022年Q3(7-9月)号に掲載された本記事(未邦訳)において筆者は、近年、大企業において「開発」志向が強まる反面、基礎研究に関する活動が縮小され、大学やスタートアップから科学的知識を「調達」するようになった風潮を指摘。社会に広く影響を与える「公共財」としての汎用技術などの発明につながる基礎研究は、基礎から応用までの橋渡しを行える大企業こそが担うべきと主張し、米国の大企業による基礎研究への回帰と、政府のさらなる支援の必要性を提言している。筆者のシャロン・ベレンゾン氏は、デューク大学フクアビジネススクール教授で、戦略学を専門とする。